まほろば【ライブレポート】2019.11.9 故郷初単独公演

まほろばスタッフです。

今回は11月9日(土)に福井県みくに未来ホールで開催されました、坂井市民文化創造企画支援事業「まほろばコンサート」のライブレポートをお送りします。


まほろばの故郷福井県では初となる単独公演。ホール会場ならではの演出もあり、まほろばの音楽世界をより大きなスケールでご体感いただける公演となりました。


今回はより真に迫るレポートにするべく、公演を終えたまほろばにも改めて振り返ってもらい、楽曲や舞台構成、二人の想い等を交えた見応えある内容となっております。


公演をご覧になった方はもちろんのこと、当日お越しいただけなかった皆様にもお楽しみいただける充実の内容となっております。どうぞ当日の写真とともにお楽しみください!



2017年にデビューを果たして以降、夫婦音楽家[ まほろば ]が生み出す音楽は様々な分野で話題を呼んでいる。


日本テレビ系人気音楽番組「バズリズム02」で取り上げられ、フジテレビ主催イベント 「THE ODAIBA 2018 マイナビステージ」に出演するなど、アーティストとしての独自の音楽性、そしてそれを具現化させるパフォーマンスが高い評価を受け、また一方では、全国誌「サウンド・デザイナー」や音楽サイト「DTMステーション」に特集記事を掲載されるなど、音楽クリエイターとしての一面にも早くから注目が集まっていた。


このような目覚しい活躍を経て、このたび満を持して故郷である福井県で単独公演を行ったまほろば。

これまで福井県ではイベント等の出演こそあったものの、本格的な単独公演は今回が初となる。

本番当日のサウンドチェック、通し稽古でのピリッとした空気感が、本公演に向けた二人の熱意を物語っていた。


会場は一昨年開館したばかりのホールということもあり、まだ木の香りが残り自然の温もりを感じる。

ライブハウスや野外等これまでも様々な会場で公演を行なってきたまほろばだか、

演出に強いこだわりを持つ彼らが、このホールという舞台をどのように「まほろば(素晴らしい場所)」へと変えていくのか。事前にSNSで公開されたいくつかの情報が想像をかき立てる。

まほろばの故郷初単独公演は予定されていた時間よりも数分早く開場した。

この「一度切り」の初公演を見届けようという人々が長蛇の列を成したからである。

恐らく今回初めてまほろばを観るという方も多かったはずであるが、359人収容の観客席は瞬く間に埋まり、開演前からその期待の大きさが窺える。


始まりを伝えるベルが鳴ると同時に会場は闇に包まれ、聞こえてきたのは水辺の音。本公演が初披露となるインストゥルメンタル曲「ほうりの池」だ。


まるで清らかな水の底で水面に揺れる光を眺めているかのような、まほろばらしい神秘的なサウンドとともに舞台の緞帳が上がっていく。

そこにはまだ二人の姿はなく、見えるのは一枚の白紗幕。

さざ波の合間に鈴の音が聞こえたその時、まほろばのロゴがふわりと浮かび上がった。

徐々に音は消え、束の間の沈黙。会場の空気がピンと張り詰める。

その静けさを破ったのは声のみが幾重にも重なり合う厳かなイントロ。

ノンビブラートのコーラスが織りなすハーモニーは繊細でありながらも、どこか深い祈りのような神秘性を感じさせ、会場は一気にまほろばの世界へと引き込まれる。

時を同じくしてイラストレーター中塚理恵氏による深い森のイラストが紗幕に大きく映し出され、 始まったのは「開門」。

紗幕の奥には白い衣装に身を包んだ二人の姿が浮かび上がり、まるで何かを守るかのように、丁寧に音を奏で始める。


「『ほうりの池』はまほろばの音楽世界へと入っていただくために、一度心を鎮めていただくような、ある意味〈お清め〉のような意味合いも含め、『開門』へと続く序奏として作曲しました。」(達-TATSU-)


終始心地よい緊張感の中、神々しさを湛えたまま「開門」の演奏が終わると、達-TATSU-の太鼓が次曲の始まりを告げる。

紗幕が上がり、溢れ出る光の中で「寿」の演奏が始まる。

「皆様ようこそお越しくださいました。」

「本日は心ゆくまで、まほろばの音楽世界をお楽しみください。」


間奏にのり聞こえてきた春-HARU-の一言に、堰を切ったように鳴り響く拍手。

映像はいつしか真っ赤な色を帯び、会場の熱を上げていく。


大きな拍手とともに「寿」が終わり、春-HARU-が短い言葉で公演の幕開けを告げる。

まほろば公演の特徴の一つとも言えるのが、この独特のトーンで丁寧に紡がれる春-HARU-のMC。

ストーリーテラーの如く観客をまほろばの世界へと誘う、そんな淡々とした口調と選ばれた言葉たちが、この一夜がまだまだ始まったばかりであることを窺わせている。



会場は再び暗闇へと戻り、遠くから風の音が聞こえてくる。

春-HARU-が静かに歌い始めると、二人の間には文章が映し出された。

シャンバラの丘」イントロダクションで歌われる造語の和訳である。

この和訳は現在どこにも公開されておらず、公演会場でしか見ることができない。


歌とコーラスのみで構成されたイントロが終わるとともに、まるでこの世界に二人だけが取り残されたようにどこか淋しげな光に照らされる二人。光と影の中、かつて桃源郷を夢見た人々の儚き想いが奏でられていく。


「嘘つきは誰」


誰に問うでもなく、ただ虚しく風に消えてしまいそうなか細い声で最後の歌詞が歌われると、拍手を待たずに流れてきたのはインストゥルメント作品「日の入り」。

異国感漂う音楽に乗せ春-HARU-の口上が響き、舞台は本公演が初となる〈まほろば太鼓衆〉の演目へと移っていく。

達-TATSU-、そして福井屈指の太鼓奏者四名からなる〈まほろば太鼓衆〉は、まさに故郷公演ならではの演目。太鼓による古き〈縁〉でつながっているという彼らは、この日のために達-TATSU-が声をかけこの場に集うこととなった。


太鼓の響きをより体感していただきたいという想いから、舞台を下り観客席の目の前で演奏されたのは、達-TATSU-作曲の器楽曲「今こそ好機」。


「曲名の通り、今こそが好機であるという意味合いの他、いつか好機が訪れるのを待つという姿勢ではなく、〈今こそが好機だ〉という心持ちで生き、備え、切り拓く。そんな想いを込め制作した楽曲です。そのため、ひるまず突き進む様を体現すべく、非常に緊張感の高い曲構成としました。」(達-TATSU-)


演奏はただただ圧巻の一言。

太鼓の打音だけで構成された楽曲に向かい合うストイックな姿と、一糸乱れぬ動き。奏者全員が同時に打ち抜く太鼓の音は息を呑む程の迫力だ。


それぞれのソロ演奏パートでは個々の奏法の違いも楽しめる。

硬派なだけではなく、観るものを魅了する華やかなパフォーマンスは、福井県に古来より息づいている大衆太鼓芸能「野良打ち」の奏法を彷彿とさせる。


まほろばの礎となっている達-TATSU-の太鼓。

そんな達-TATSU-の太鼓奏者としての懐の深さが窺える、目新しい演目となった。

鳴り止まぬ拍手の中、聞こえてきたのは一転してスペイシーなデジタルサウンド。

それに合わせ青白い光線が二人の間を行き来する。

サウンドは徐々にクレッシェンドし、やがてピークへ到達。そして音がぷつりと途絶えたその刹那、フラッシュのように「おいで」の文字が点滅する。


積み重ねられた春-HARU-の声が四方に散らばっていくような馴染みのイントロダクション。舞台には予測不能な動きが光り輝くアメーバのようにぬめりと広がっていく美しい幾何学模様が描き出される。シンセのリフが鳴り始める頃にはこれまで創られた世界観がガラリと変わっていた。

ここからまほろばの音楽世界は一気に加速する。


四つ打ちのビート、緻密に組み込まれたリズム、エレピのコードにオートチューンされた多重コーラス。現代的なデジタルサウンドの中でも達-TATSU-の太鼓、春-HARU-の歌はどこかノスタルジックに響いてくる。

楽しげにステップを踏み自由に演奏する二人の姿は、まるで何にもとらわれない子供のように、ジャンルという枠を超え表現できる喜びを感じさせる。


まほろばの攻勢は止まらない。「おいで」の眩い世界から一転、流れてきたのは一音一音妖しく火の玉のように灯る音の粒たち。暗闇の中、とある「詩」が浮かび上がったかと思うとどこからともなく声が聞こえてくる。

「それは歌い継がれるもののけの歌。」


舞台には両手で顔を覆った春-HARU-の姿、詩を読む声は何かに遮られているかのように歪み、右から左から怪しげに耳へと届いてくる。詩の終わりとほぼ時を同じくして、不穏な白煙と共にゆらりと浮かび上がったのは「さざらし」の文字。

けたたましく鳴り響く締太鼓が口火を切れば、もののけの世直しの始まり。

昔話を聞いているかのようなAメロから始まり、土地神の化身である〈さざらし〉を囃し立てるサビが終わる頃には、いつしか会場全体がこの物語の中に入り込んでしまっている。


コンパクトながら、一度聴けば忘れられない中毒性を持つ1番のサビを越え、間奏では


「さざらしの前奏・間奏は〈まだ見ぬ民族楽器による賑々しい入場曲(ファンファーレ)〉をイメージして作曲しています。」(春-HARU-)


というように、非常に華やかで勇ましいテーマが鳴り響く。

怒涛に展開していく物語の中で休む間もなく打ち込まれる達-TATSU-の太鼓と、その姿に感化されるかのように上がっていく観客席の熱量。そしてそんな中でもどこか冷静に、淡々と「語り」をすすめるような春-HARU-の歌声。


なんとも不思議な世界観に魅了されている間に曲も終盤、息もつかせぬ達-TATSU-の太鼓ソロを煽るかのように春-HARU-が頭上で大きく手を打ち始めると、二人の後方には、イラストレーター中塚理恵氏による〈さざらし〉が出現。

舞台いっぱいに映し出された大迫力の〈さざらし〉、その大きな眼がこちらを睨む。

「はい、さよなら。」


言い放たれたかと思うと辺りは瞬く間に暗闇へ。

拍手の渦の中、微かに聞き慣れた音が耳に届く。雨音だ。


祭りの後の虚しさを洗い流すかのように降りしきる雨が、ピアノの優しい音色を引き立て、流れるように「夏のかけら」へと移り変わる。

ぽつりぽつりと辿々しく落とされるピアノの音は、行き場をなくした思い出のような、見つけたそばから消えていく儚い夢のような印象を受ける。


切々と歌われる遠い夏の記憶。

故郷の夏の風景を思わせる歌詞に、達-TATSU-の鳴り物が風情を添えると、会場は幽玄な雰囲気に包まれた。


曲の途中、春-HARU-が舞台中央へ。

まほろばの作品の中ではあまり見られない、〈君〉という特定の一人を思わせる歌詞が出てくる「夏のかけら」。


観客席により近い場所で歌うことで、主人公と〈君〉の距離感をより強く感じてほしい。そんな想いから生まれたと言うこの演出。

ふと気づけば祭りで昂ったはずの心は鎮まり、会場も清らかな静寂で満たされていた。

やがて聞こえてきたのは鈴の音、そして深いディレイによって幾重にも重なる三味線の音。

インストゥルメンタル曲「月光記」が流れ始めると、舞台にはまほろばの故郷、そしてまさにこの会場のある福井県の景色が映像で映し出される。


まほろばの音楽の源とも言えるこれらの景色、そしてドラマティックに展開していく「月光記」の抑揚が、二人の故郷への想いを代弁するかのようである。


「今宵も音を奏でます、今宵も希望を奏でます。」

「まほろばの時が果てるまで。」


結びの言葉と共に郷愁の時は終わり、〈希望〉をテーマにしたまほろばのデビュー曲「大海に光りの舟よ」へと続く。

春-HARU-の艷やかな歌声を呼び水に、達-TATSU-の太鼓ソロが始まる。

迷いなく真っ直ぐ上げられた達-TATSU-のバチ、その姿はまるで希望を指し示すかのように、我々を希望へと導くかのように神々しい光に照らされ、腕を振り下ろしたと同時に力強い打音が地を伝って胸に響く。


まほろば結成からこれまで、長く演奏されてきた1曲。舞台を重ねより一層洗練された二人の演奏は緻密で丁寧でありながらも、内に秘めた〈希望〉に対する揺るぎない想いが音の波となって打ち寄せるような圧倒的な迫力を感じる。


観客席では蛍光色のペンライトが灯り、とりどりの光がほとばしる映像、色鮮やかな照明と合わさって会場をカラフルに彩っている。〈希望〉の在り方も十人十色、しかしこの曲を通して誰もが今豊かな時を過ごし、舞台・観客席という境界線を超え心が一つになった瞬間である。

エレピのフレーズが曲の終わりを告げ、前曲とは打って変わり、良い意味での〈土臭さ〉を感じさせる声色で春-HARU-が歌い始めたのは、本編最後を締めくくる「我が里」の一節。

故郷にいる家族、そして故郷という土地を守る人々を想いながら作ったというこの曲、


「私たちの心の中にはいつも故郷がある。」

「そしてこの命が終わる時、私たちは故郷の土へと還る。」


言葉の一つ一つに想いを託すかのようなMCをはさみ、まさに生まれ育った土地で「我が里」を奏でる二人。

達-TATSU-が打つ太鼓に合わせて徐々に広がった手拍子は二人を優しく包み込み、いつしか会場全体を満たしていた。

「我が里」を歌い終えると、流れてきた「まほろばの夜明け(inst.)」にのせて春-HARU-が謝辞を述べる。

涙を堪えているのだろうか、声を絞り出すように感謝の想いを伝えると、それに応える割れんばかりの拍手が沸き起こった。


舞台から明かりが消えても拍手は鳴り止まず、いつしかアンコールを求める手拍子へと変わる。

舞台に戻った二人は深くお辞儀をすると、春-HARU-、達-TATSU-の順に今回の単独公演に対する想いが語られた。


途中、達-TATSU-・春-HARU-共に涙を見せる一幕もあり、故郷での初単独公演に対する想いの強さが窺える。

アンコール曲として演奏されたのは「お天道様」。

この曲は2018年、まほろばの故郷を含む北陸地方が豪雪被害に見舞われたことをきっかけに作られた曲であり、

故郷福井県で演奏されるのは本公演が初となった。


       

夜を越えりゃ えんやよいさ

明日が来れば えんやよいさ

生きていれば えんやよいさ

       


力強く歌われる歌詞とともに、雪の中にそびえ立つ1本の大樹を描いたイラストが、

〈生きること〉を祝福しているようにも感じた。


「人々が様々な場所で辛い出来事に立ち向かう時、少しでも支えになれるような、小さな希望の灯火となれるような曲を作りたかった。」(春-HARU-)


過日に語られた「お天道様」へ込めた想いが、この時の二人の柔らかな笑顔の中にしっかりと宿っているのを感じた。

すべての演目が終了し、会場には大きな拍手が響いている。

観客席から届けられた大きな花束を抱え、深いお辞儀によって感謝を伝えるまほろばの二人。公演序盤に語られた、


「心ゆくまで、まほろばの音楽世界をお楽しみください。」


この言葉通り、これまでに見たことのない世界に誘われ、魅了されたひととき。


ホール会場であることを強く意識したスケールの大きい演出、美しい映像ときらびやかな照明によって華やかに彩られた舞台、そしてまほろばの演奏とパフォーマンス。すべてがピタリと合わさり、唯一無二の幻想世界を表現したまほろば。まさに「新しい日本」がここには在った。


その世界を体感した人々の感動は、鳴り止まぬ拍手が、そして何よりもその表情が実に雄弁に物語っている。

名残惜しくも静かに降り始めた緞帳によって二人の姿が見えなくなると、幻想の世界から現実に戻るがごとく、故郷でのまほろば単独公演は幕を下ろした。

現在、特設サイト「まほろば羅針盤」にて新曲を発表しているまほろば。【音楽とともに巡る「まほろば(素晴らしい場所)」への旅】をコンセプトにしたこのサイトでは、音楽を〈曲単体〉で楽しむものとして提供するだけではなく、イラストと曲想を用いることでより壮大なスケールの作品へと昇華させている。


公演においても楽曲においても、常に新しい感動を生み出す彼らが、来たる2020年は一体どのような作品を届けてくれるのか。今後も夫婦音楽家まほろばの活動から目が離せない。


ライブデータ 

日時:2019年11月9日18:30〜

会場:みくに未来ホール

出演:まほろば / オープニングアクト Sati


演目     

intro. ほうりの池(inst.)

1. 開門【MV視聴

2. 寿【試聴

3. シャンバラの丘【試聴

〜日の入り(inst.)〜

4. 今こそ好機

5. おいで【MV視聴

6. さざらし【MV視聴

7. 夏のかけら【試聴

〜月光記(inst.)〜

8. 大海に光りの舟よ【MV視聴

9. 我が里【試聴

encore. お天道様


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STAFF

日本の原風景を音で奏でる、和太鼓奏者 [ 達-TATSU- ] と 作詞作曲家 [ 春-HARU- ] による夫婦音楽家
http://www.w-mahoroba.jp